青空文庫に氷島をアップロードしました。
わが思惟するものは何ぞや
すでに人生の虚妄に疲れて
今も尚家畜の如くに飢ゑたるかな。
我れは何物をも喪失せず
また一切を失ひ盡せり。
「乃木坂倶楽部」のこの一節が「ダナエ」(藤原伊織)に出てきてちゃんと読みたくなった。萩原朔太郎が妻と別れたあと、乃木坂倶楽部に独り暮らしてた頃の作品らしい。
一日辻潤來り、わが生活の荒蕪を見て唖然とせしが、忽ち顧みて大に笑ひ、共に酒を汲んで長嘆す。
1929年のことだから萩原朔太郎43歳、辻潤45歳のころか。辻潤も伊藤野枝に去られた経験があるから妻に去られた者同士が相憐れみ合ってる姿を想像すると侘しくも可笑しい。
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